第31回(2021年度)
作品賞&個人賞
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作品賞
偶然と想像
製作:NEOPA/fictive、監督:濱口竜介
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主演女優賞
瀧内公美
「由宇子の天秤」
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主演男優賞
成田凌
「まともじゃないのは君も一緒」
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監督賞
春本雄二郎
「由宇子の天秤」
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新人監督賞
松本壮史
「サマーフィルムにのって」
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特別賞
孫家邦
「花束みたいな恋をした」製作
函館市民映画館シネマアイリス
長年の功績に対して
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特別功労賞
澤井信一郎
映画監督としての長年の功績に対して
ベストテン
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1
偶然と想像
監督:濱口竜介
出演:古川琴音、中島歩、玄理
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2
由宇子の天秤
監督:春本雄二郎
出演:瀧内公美、河合優実、梅田誠弘
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3
あのこは貴族
監督:岨手由貴子
出演:門脇麦、水原希子、高良健吾
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4
いとみち
監督:横浜聡子
出演:駒井蓮、豊川悦司
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5
すばらしき世界
監督:西川美和
出演:役所広司、仲野太賀、橋爪功
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6
茜色に焼かれる
監督:石井裕也
出演:尾野真千子、和田庵、片山友希
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7
空白
監督:𠮷田恵輔
出演:古田新太、松坂桃李
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8
花束みたいな恋をした
監督:土井裕泰
出演:菅田将暉、有村架純
草の響き
監督:斎藤久志
出演:東出昌大、奈緒、大東駿介
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9
BLUE/ブルー
監督:𠮷田恵輔
出演:松山ケンイチ、木村文乃、柄本時生
選考委員
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足立喜之(映画業界従事者)
選評
■個人賞
☆主演女優賞=瀧内公美
☆主演男優賞=松山ケンイチ
☆監督賞=西川美和
☆新人監督賞=松本壮史
■ベストテン
1位 BLUE/ブルー
2位 空白
3位 すばらしき世界
4位 茜色に焼かれる
5位 痛くない死に方
6位 ヤクザと家族 The Family
7位 恋する寄生虫
8位 孤狼の血 LEVEL2
9位 大綱引きの恋
10位 キャラクター
■コメント
ここ数年ボクシングを題材にした秀作が登場。2021年末に観た「BLUE/ブルー」は、まるでヘミングウェイの「闘牛(マタドール)」の主人公がボクサーになった様に、敗者の美学を体現させた松山ケンイチがとてもとても愛おしく切なかった。 -
石飛徳樹(朝日新聞記者)
選評
■個人賞
☆主演女優賞=瀧内公美
☆主演男優賞=松山ケンイチ
☆監督賞=永井聡
☆新人監督賞=春本雄二郎
■ベストテン
1位 偶然と想像
2位 由宇子の天秤
3位 キャラクター
4位 アジアの天使
5位 花束みたいな恋をした
6位 まともじゃないのは君も一緒
7位 BLUE/ブルー
8位 COME&GO
9位 愛のまなざしを
10位 ひらいて
■コメント
図らずも9位までがオリジナル脚本になった。しかも、アート映画ではなく、ホラーサスペンスやラブストーリーというエンターテインメントの王道だ。売れている人気漫画や小説を原作にする。そんな安全運転をやめようという流れだとしたら、とても喜ばしいことだと思う。女優賞、「茜色に焼かれる」の尾野真千子が抜けたら、「由宇子の天秤」の瀧内公美で決まりだろう。新人監督も「由宇子の天秤」の問題意識をたたえたい。 -
磯島治之(編集者)
選評
■個人賞
☆主演女優賞=瀧内公美
☆主演男優賞=古田新太
☆監督賞=大島新
☆新人監督賞=松本壮史
■ベストテン
1位 偶然と想像
2位 香川1区
3位 空白
4位 愛のまなざしを
5位 水俣曼荼羅
6位 サマーフィルムにのって
7位 あのこは貴族
8位 花束みたいな恋をした
9位 由宇子の天秤
10位 茜色に焼かれる
■コメント
二宮尊徳曰く「道徳なき経済は寝言、経済なき道徳は罪悪」。これに倣って考えれば「希望なき現実は絶望、現実な希望は夢物語」となろうか? 今年度の秀作は今の日本の現実を反映させた「希望なき現実の絶望」をうまく描いた作品が多かった。これはこれでもちろんすばらしかった。が、一方で私は、夢物語であってもいいので現実なき希望、世間知らずの若者が自分の夢だけに直進するような映画ももっと作られるべきだと思う(サマーフィルムにのって)。今時代が必要としているのは、BIGBOSS新庄監督のような、突き抜けた明るさではないだろか。 -
伊藤さとり(映画パーソナリティ)
選評
■個人賞
☆主演女優賞=瀧内公美
☆主演男優賞=東出昌大
☆監督賞=西川美和
☆新人監督賞=小島央大
■ベストテン
1位 偶然と想像
2位 すばらしき世界
3位 由宇子の天秤
4位 ベイビーわるきゅーれ
5位 茜色に焼かれる
6位 いとみち
7位 サマーフィルムにのって
8位 JOINT
9位 草の響き
10位 あのこは貴族
■コメント
2021年は単に社会的弱者という視点からではなく、『すばらしき世界』『ヤクザと家族 The Family』『JOINT』など、反社から更生を目指そうともがく人々の姿を描き、『由宇子の天秤』のように表面上で“正義”をかざすことの危険性を訴える映画で際立つものが多かった。更に『ベイビーわるきゅーれ』の阪元裕吾監督や『JOINT』の小島央大監督のように20代で独創的な映画作りをする監督に期待が膨らむ。 -
臼井一郎(フリー)
選評
■個人賞
☆主演女優賞=瀧内公美
☆主演男優賞=綾野剛
☆監督賞=春本雄二郎
☆新人監督賞=該当なし
■ベストテン
1位 由宇子の天秤
2位 いとみち
3位 孤狼の血 LEVEL2
4位 ヤクザと家族 The Family
5位 すばらしき世界
6位 茜色に焼かれる
7位 明日の食卓
8位 ボクたちはみんな大人になれなかった
9位 JOINT
10位 きみが死んだあとで -
大高宏雄(日本映画プロフェッショナル大賞実行委員長、映画ジャーナリスト)
選評
■個人賞
☆主演女優賞=加賀まりこ
☆主演男優賞=菅田将暉
☆監督賞=𠮷田恵輔
☆新人監督賞=春本雄二郎
■ベストテン
1位 空白
2位 孤狼の血 LEVEL2
3位 キャラクター
4位 偶然と想像
5位 花束みたいな恋をした
6位 由宇子の天秤
7位 茜色に焼かれる
8位 草の響き
9位 痛くない死に方
10位 梅切らぬバカ -
大塚史貴(映画.com副編集長)
選評
■個人賞
☆主演女優賞=奈緒
☆主演男優賞=若葉竜也
☆監督賞=岨手由貴子
☆新人監督賞=児山隆
■ベストテン
1位 草の響き
2位 あのこは貴族
3位 アジアの天使
4位 花束みたいな恋をした
5位 猿楽町で会いましょう
6位 街の上で
7位 キャラクター
8位 ベイビーわるきゅーれ
9位 マイ・ダディ
10位 浜の朝日の噓つきどもと
■コメント
全体的に良作の多い1年になったのではないだろうか。岨手由貴子の「あのこは貴族」は、現代を生きる若い世代への静かで激烈なエール。どの作品でも役に寄り添い続けてきた奈緒および若葉竜也は、22年以降さらなる充実期に入ることは間違いないだろう。 -
荻野洋一(番組等映像演出/映画評論家)
選評
■個人賞
☆主演女優賞=富司純子
☆主演男優賞=菅田将暉
☆監督賞=岨手由貴子
☆新人監督賞=須藤蓮
■ベストテン
1位 偶然と想像
2位 椿の庭
3位 あのこは貴族
4位 茜色に焼かれる
5位 花束みたいな恋をした
6位 いとみち
7位 Shari
8位 逆光
9位 CHAIN チェイン
10位 Arc アーク
■コメント
日プロの面白さとは、オルタナティブなのに華やかかつそれなりの権威性をもって賞状を手渡してしまう痛快さだ。もらう側も気分が悪いわけがないから、けっこう着飾って壇上で破顔する。ところが今年は究極のオルタナティブたる『ドライブ・マイ・カー』がエスタブリッシュメント側に拐われ、なにやら主賓を欠くパーティになりはしないか? それを払拭して余りあるとすれば、レジェンド富司純子の主演女優賞しかない。 -
加藤敦(北海道新聞記者)
選評
■個人賞
☆主演女優賞=瀧内公美
☆主演男優賞=松山ケンイチ
☆監督賞=坪川拓史
☆新人監督賞=松本壮史
■ベストテン
1位 モルエラニの霧の中
2位 サマーフィルムにのって
3位 あのこは貴族
4位 先生、私の隣に座っていただけませんか?
5位 BLUE/ブルー
6位 由宇子の天秤
7位 孤狼の血 LEVEL2
8位 ひらいて
9位 花束みたいな恋をした
10位 のさりの島
■コメント
①は北海道・室蘭の市民映画だが、映画の重要な役割である、失われゆく風景をフィルムにとどめることで普遍的な価値を持った。映画愛にあふれて楽しい②、女優二人の逆キャスティングの妙の③、柄本佑のうろたえぶりが笑える④。𠮷田恵輔監督は⑤と「空白」の充実ぶり。答えのない問いを提示した⑥、孤高のバイオレンスの⑦、女子的アンビバレンツの⑧。⑨は具体名を散りばめることで都会のリアルを描き、逆に⑩は地方のファンタジーを描いた。 -
上島春彦(映画批評)
選評
■個人賞
☆主演女優賞=清原果那
☆主演男優賞=成田凌
☆監督賞=前田弘二
☆新人監督賞=小川紗良
■ベストテン
1位 海辺の金魚
2位 空蝉の森
3位 夢幻紳士 人形地獄
4位 ホムンクルス
5位 すばらしき世界
6位 樹海村
7位 騙し絵の牙
8位 まともじゃないのは君も一緒
9位 偶然と想像
10位 街の上で
■コメント
地味な傑作が沢山生まれた年だった。キネ旬に選べなかった物を優先したらこうなった。今さらだがキネ旬にも『海辺の金魚』を入れるべきだった。反省。それで新人監督に小川紗良。一部で有名な『生きていた男』にインスパイアされた『空蝉の森』も「忘れられた傑作」と言っていい。映画ジャーナリストがあんまり新作映画をきちんと劇場で見なくなっているのではないかな。自戒も込めてそう思う。 -
河本清順(シネマ尾道支配人)
選評
■個人賞
☆主演女優賞=有村架純
☆主演男優賞=山本一賢
☆監督賞=横浜聡子
☆新人監督賞=須藤蓮
■ベストテン
1位 偶然と想像
2位 いとみち
3位 かそけきサンカヨウ
4位 まともじゃないのは君も一緒
5位 息をするように
6位 あのこは貴族
7位 すばらしき世界
8位 子供はわかってあげない
9位 キネマの神様
10位 逆光
■コメント
コロナ以降、ミニシアターに変化が起きた。若者が少しずつミニシアターに通うようになったのだ。「サブスクとは全然違う」「映画館の雰囲気が好き」と言い、ミニシアターの魅力にはまった若者も。選んだベストテンは、そんな若者たちを集めてくれた映画だ。ベストテンにはおさまらなかったが、『空白』『映画 太陽の子』『くれなずめ』『くじらびと』もその力を発揮してくれた素晴らしい映画だった。 -
古賀重樹(新聞記者)
選評
■個人賞
☆主演女優賞=古川琴音
☆主演男優賞=中島歩
☆監督賞=小島はるか、瀬尾夏美
☆新人監督賞=中川奈月
■ベストテン
1位 偶然と想像
2位 水俣曼荼羅
3位 すばらしき世界
4位 茜色に焼かれる
5位 あのこは貴族
6位 空白
7位 草の響き
8位 由宇子の天秤
9位 いとみち
10位 二重の街まち/交代地のうたを編む
■コメント
「偶然と想像」第3話の占部房子、河井青葉をぜひとも俳優賞に入れたかったのだが、女一人、男一人という枠ではいたしかたない。どちらかを落とすのはしのびないので、第1話の2人にした。監督賞の小森はるか+瀬尾夏美も含めて、未来志向のセレクションが日プロ大賞にふさわしいと考えた。どの作品も力があって、充実したベストテンだと思う。 -
小張アキコ(映画評論家)
選評
■個人賞
☆主演女優賞=有村架純
☆主演男優賞=柄本佑
☆監督賞=金子修介
☆新人監督賞=春本雄二郎
■ベストテン
1位 偶然と想像
2位 信虎
3位 由宇子の天秤
4位 花束みたいな恋をした
5位 いのちの停車場
6位 あのこは貴族
7位 香川1区
8位 海辺の彼女たち
9位 痛くない死に方
10位 くれなずめ
■コメント
コロナ禍で、映画館に足を運ぶのに躊躇した1年。濱口竜介監督の海外の映画祭での連続快挙にほのかな日本映画の未来を感じました。時代劇にしては予算が少なそうな「信虎」。ダイナミックな時代劇を見たいと思うのは私だけでしょうか。ここに選ぶことはできませんでしたが日本人俳優が出演している海外映画が増えてきたのが、これからの楽しみです。外国映画のNo.1は「MINAMATA」、才能ある俳優はどんどん活躍の場を広げてほしいです。 -
佐藤佐吉(映画監督・脚本家・俳優)
選評
■個人賞
☆主演女優賞=髙石あかり、伊澤彩織
☆主演男優賞=山本一賢
☆監督賞=岨手由貴子
☆新人監督賞=中川奈月
■ベストテン
1位 あのこは貴族
2位 ベイビーわるきゅーれ
3位 彼女はひとり
4位 JOINT
5位 逆光
6位 草の響き
7位 偶然と想像
8位 JUNK HEAD
9位 ひらいて
10位 海辺の彼女たち
■コメント
2021年は濱口竜介監督『ドライブ・マイ・カー』の年だったと思うが国内映画賞受賞作品は日プロの規定で投票できないので上記の結果となった。しかし昨年は低予算ながら作家性豊かな作品が次々と登場し逆にメジャー作品の限界を知らしめる年になったと思う。 -
島村卓弥(文化通信社 映画部記者)
選評
■個人賞
☆主演女優賞=石川瑠華
☆主演男優賞=東出昌大
☆監督賞=斎藤久志
☆新人監督賞=首藤凛
■ベストテン
1位 草の響き
2位 BLUE/ブルー
3位 偶然と想像
4位 猿楽町で会いましょう
5位 ひらいて
6位 いとみち
7位 子供はわかってあげない
8位 街の上で
9位 うみべの女の子
10位 エッシャー通りの赤いポスト
■コメント
人間は突き詰めて孤独な存在であることを描いた『草の響き』に、「(自他ともに)人の気持ちには触れられやしない」というセリフがあった。それでも人は、生を渇望し、他人の核心に触れたがる性を持っているという究極のテーマに挑んでいた。『草の響き』を1位に置けば自然と、核心を殴られ続けながらもダウンしないボクサーたちの闘い『BLUE/ブルー』、エロテイックにも核心をまさぐり続ける人たちの群像『偶然と想像』が続いた。 -
徐昊辰(映画ジャーナリスト)
選評
■個人賞
☆主演女優賞=瀧内公美
☆主演男優賞=さかはらあつし
☆監督賞=庵野秀明
☆新人監督賞=春本雄二郎
■ベストテン
1位 シン・エヴァンゲリオン劇場版
2位 偶然と想像
3位 海辺の彼女たち
4位 由宇子の天秤
5位 AGANAI 地下鉄サリン事件と私
6位 きまじめ楽隊のぼんやり戦争
7位 水俣曼荼羅
8位 いとみち
9位 COME&GO
10位 コントラ KONTORA
■コメント
2021年の日本映画は非常に元気だった。濱口竜介監督は世界のHAMAGUCHIになり、春本雄二郎監督や藤元明緒やアンシュル・チョウハン監督などの若手監督の活躍も目立つ! 更に、さかはらあつしという奇才は、生き方を模索する真摯な作品を、どのジャンルにも属しない、“さかはらあつし”しかできない撮り方で見事に完成した。最後は、庵野秀明監督の『シン・エヴァンゲリオン劇場版𝄇』に最高の敬意を表したい。“さようなら全てのエヴァンゲリオン” -
進藤良彦(映画・ドラマ批評)
選評
■個人賞
☆主演女優賞=上白石萌歌
☆主演男優賞=菅田将暉
☆監督賞=斎藤久志
☆新人監督賞=阪元裕吾
■ベストテン
1位 子供はわかってあげない
2位 まともじゃないのは君も一緒
3位 あの頃。
4位 草の響き
5位 逆光
6位 ベイビーわるきゅーれ
7位 クレヨンしんちゃん 謎メキ!花の天カス学園
8位 シン・エヴァンゲリオン劇場版
9位 劇場版 きのう何食べた?
10位 バイプレイヤーズ もしも100人の名脇役が映画を作ったら
■コメント
個人的なベスト・ワンは断然「花束みたいな恋をした」だが、何故だか「日プロには似合わないかな……」と思ってしまったので、あえて外し、より私的な偏愛を押し出すことにした。過去、日プロでは菅田将暉に投票していなかったことに気づいたので、キネ旬でも投票した萌歌&菅田に。逆に沖田修一には何度か投票しているので、演出の力が顕著だった「草の響き」の斎藤久志を監督賞に。 -
鈴木淳(映像企画・プロデューサー)
選評
■個人賞
☆主演女優賞=上白石萌歌
☆主演男優賞=若葉竜也
☆監督賞=今泉力哉
☆新人監督賞=佐藤二郎
■ベストテン
1位 街の上で
2位 子供はわかってあげない
3位 キャラクター
4位 騙し絵の牙
5位 孤狼の血 LEVEL2
6位 ヤクザと家族 The Family
7位 花束みたいな恋をした
8位 はるヲうるひと
9位 梅切らぬバカ
10位 99・9 刑事弁護士 THE MOVIE
■コメント
長引くコロナ禍でエンタメ業界も苦しんだ2021年、劇場で映画を鑑賞する事の至福感を再確認した1年。鑑賞した邦画は44本、①②ともささやかな幸福感と他愛もない空気感が心地良かった。③④⑤⑩は大手映画会社で制作された作品それぞれに劇場ならではの没入感で大いに楽しめた。演技者としては③のFukase、⑥の舘ひろし、⑧の坂井真紀、近藤洋子、笹野鈴々音、中でも⑨の加賀まりこは素晴らしかった。 -
高崎俊夫(編集者・映画批評家)
選評
■個人賞
☆主演女優賞=三浦透子
☆主演男優賞=成田凌
☆監督賞=原一男
☆新人監督賞=松本壮史
■ベストテン
1位 水俣曼荼羅
2位 偶然と想像
3位 すばらしき世界
4位 いとみち
5位 子供はわかってあげない
6位 まともじゃないのは君も一緒
7位 由宇子の天秤
8位 愛のまなざしを
9位 サマーフィルムにのって
10位 草の響き
■コメント
①の原一男は土本典昭が踏み込まなかった水俣の患者たちの<性>の領域にも深く執心することで、水俣の<現在>を鮮烈に浮かび上がらせた。②は長篇型と思われた濱口竜介がコント形式でも舌を巻く卓越した才能を持っていることを立証している。③は東日本大震災の被災者と思しきソープ嬢をはじめとする女性たちの描写が深く印象に残った。⑥は一見、屁理屈の応酬のような、グダグダした他愛もないダイアローグが際立って魅力的である。 -
谷岡雅樹(ノンフィクション作家)
選評
■個人賞
☆主演女優賞=篠原ゆき子
☆主演男優賞=森山未來
☆監督賞=春本雄二郎
☆新人監督賞=澤佳一郎
■ベストテン
1位 アリスの住人
2位 空白
3位 BLUE/ブルー
4位 花束みたいな恋をした
5位 由宇子の天秤
6位 すばらしき世界
7位 騙し絵の牙
8位 ボクたちはみんな大人になれなかった
9位 片袖の魚
10位 かば
■コメント
何ということもない話なのに、飽きさせない。いや、面白い。俳優が見たこともないのに、とてもいい。味がある。良い顔で、或いは美人で、演技達者な俳優がこんなにもいるのか。驚く。このざらざらしたタッチ。デジャブ感もある。だけど、やけに新鮮で、デジャブ感自体が新鮮なデジャブ感の映画だ。来る。観たら分かる。それが10位『かば』だ。そして一位はカメラが人を捉え、心を捉えている。観ろ。 -
寺脇研(映画運動家)
選評
■個人賞
☆主演女優賞=佐久間由衣
☆主演男優賞=東出昌大
☆監督賞=春本雄二郎
☆新人監督賞=川本貴弘
■ベストテン
1位 由宇子の天秤
2位 君は永遠にそいつらより若い
3位 BLUE/ブルー
4位 いとみち
5位 子供はわかってあげない
6位 草の響き
7位 茜色に焼かれる
8位 かば
9位 痛くない死に方
10位 サマーフィルムにのって
■コメント
韓国映画の後塵を拝するばかりの日本映画に、①の春本雄二郎のような存在が現れたのはうれしい。他にも、10本選ぶのが無理だった2020年と違い、②以下の佳作がそれぞれいいところを見せた。外国での評判ばかり気にしている浅薄な秀作気取りの作品より、これらの方がよほどいい。特に、⑧の川本貴弘の登場は心強かった。自力で作った映画を自力で映画館に売り込み、自主映画の新しい成功の形を作っている。 -
中村勝則(映画ライター)
選評
■個人賞
☆主演女優賞=瀧内公美
☆主演男優賞=古田新太
☆監督賞=該当なし
☆新人監督賞=松本壮史
■ベストテン
1位 空白
2位 由宇子の天秤
3位 すばらしき世界
4位 そして、バトンは渡された
5位 花と沼
6位 西成ゴローの四億円(前後編)
7位 かば
8位 サマーフィルムにのって
9位 痛くない死に方
10位 キャラクター
■コメント
「日プロ」の選考基準に添っての選出であるが、前年と同じく私的ベストテンとほぼ変わりはない。監督賞を(該当なし)にしたのは、やはり2021年度は𠮷田恵輔以外に考えられないからである。ベストテンは一監督一作品にしたゆえ選外になったが、『BLUE/ブルー』もベストテン級の傑作であることを記しておきたい。 -
長野辰次(フリーライター)
選評
■個人賞
☆主演女優賞=石川瑠華
☆主演男優賞=上西雄大
☆監督賞=春本雄二郎
☆新人監督賞=清水ハン英治
■ベストテン
1位 トゥルーノース
2位 由宇子の天秤
3位 偶然と想像
4位 ねばぎば新世界
5位 猿楽町で会いましょう
6位 愛のまなざしを
7位 あのこは貴族
8位 あの頃。
9位 騙し絵の牙
10位 きまじめ楽隊のぼんやり戦争
■コメント
北朝鮮の強制収容所の内情をリアルに描いた『トゥルーノース』は、『鬼滅の刃』以上に多くの人に観てほしい3D作品だ。アニメ表現の可能性を広げた点でも、高く評価したい。監督賞は『由宇子の天秤』の春本監督。作品づくりに妥協しないよう春本監督自身も出資し、『この世界の片隅に』の片渕須直監督も制作に名前を連ねている。『ひとくず』の監督&脚本家でもある上西雄大、『うみべの女の子』にも主演した石川瑠華ら、新しい顔ぶれがこれからの映画界を盛り上げてくれるに違いない。 -
樋口尚文(映画評論家・映画監督)
選評
■個人賞
☆主演女優賞=杉野希妃
☆主演男優賞=綾野剛
☆監督賞=万田邦敏
☆新人監督賞=中川奈月
■ベストテン
1位 愛のまなざしを
2位 いとみち
3位 シュシュシュの娘
4位 彼女はひとり
5位 あのこは貴族
6位 茜色に焼かれる
7位 愛のくだらない
8位 ベイビーわるきゅーれ
9位 ヤクザと家族 The Family
10位 草の響き
■コメント
メジャー公開作の『孤狼の血 LEVEL2』『竜とそばかすの姫』『シン・エヴァンゲリオン劇場版𝄇』などもすこぶる面白かったが、あえて10本はもう少し作品規模がスリムで小味な作品に絞った。中堅・新人の女性監督の仕事がとても弾けていて刺激になった。 -
藤永一彦(ギンレイホール)
選評
■個人賞
☆主演女優賞=清原果那
☆主演男優賞=成田凌
☆監督賞=万田邦敏
☆新人監督賞=堀江貴大
■ベストテン
1位 愛のまなざしを
2位 偶然と想像
3位 JUNK HEAD
4位 先生、私の隣に座っていただけませんか?
5位 老後の資金がありません!
6位 アジアの天使
7位 騙し絵の牙
8位 街の上で
9位 いとみち
10位 まともじゃないのは君も一緒
■コメント
2021年の日本映画は充実していた。「愛のまなざしを」以外は順不同で間口の広い質の高いエンタメ性を兼ね備えた作品ばかり。他にも「由宇子の天秤」「あのこは貴族」「シュシュシュの娘」「草の響き」「ボクたちはみんな大人になれなかった」「花束みたいな恋をした」「ゾッキ」「JOINT」「孤狼の血 LEVEL2」「COME&GO」「ねばぎば 新世界」「ベイビーわるきゅーれ」なども。オダギリジョーがよかったが入れる所がなかった。 -
堀口慎(日本映画製作者連盟)
選評
■個人賞
☆主演女優賞=門脇麦
☆主演男優賞=成田凌
☆監督賞=横浜聡子
☆新人監督賞=首藤凛
■ベストテン
1位 あのこは貴族
2位 いとみち
3位 偶然と想像
4位 茜色に焼かれる
5位 まともじゃないのは君も一緒
6位 愛のまなざしを
7位 ひらいて
8位 君は永遠にそいつらより若い
9位 彼女が好きなものは
10位 ベイビーわるきゅーれ
■コメント
例年、選考対象作品の中から、キネマ旬報ベストテンに入選した作品を極力除外して選出しているのだが、本年は選択肢が無かった。新人監督賞は他に草野翔吾、池田暁、松本壮史、阪元裕吾、上田義彦、小川紗良などが候補となった。 -
松崎まこと(映画活動家/放送作家)
選評
■個人賞
☆主演女優賞=上白石萌歌
☆主演男優賞=成田凌
☆監督賞=リム・カーワイ
☆新人監督賞=中川奈月
■ベストテン
1位 あのこは貴族
2位 COME&GO
3位 逆光
4位 光を追いかけて
5位 まともじゃないのは君も一緒
6位 CHAIN チェイン
7位 彼女はひとり
8位 愛のくだらない
9位 東京オリンピック 2017 都営霞ヶ丘アパート
10位 へんしんっ!
■コメント
日本映画の今は、インディーズ映画とその出身監督なしでは、もはや語れない。第1位は、「傑作」と言う他はない、岨手由貴子監督作品。第2位の国際色豊かな群像劇を撮ったリム・カーワイを、監督賞に推す。優れた若手が多い中、絞るのが悩ましかった新人監督賞は、中川奈月で決まり。ベスト10からは漏れたが、沖田修一監督の快作『子供はわかってあげない』で伸びやかな演技を見せた上白石萌歌には、主演女優賞を贈りたい。 -
森直人(映画評論家)
選評
■個人賞
☆主演女優賞=瀧内公美
☆主演男優賞=若葉竜也
☆監督賞=春本雄二郎
☆新人監督賞=首藤凛
■ベストテン
1位 由宇子の天秤
2位 街の上で
3位 あのこは貴族
4位 茜色に焼かれる
5位 海辺の彼女たち
6位 いとみち
7位 ひらいて
8位 空白
9位 きまじめ楽隊のぼんやり戦争
10位 扉を閉めた女教師
■コメント
作品的には例年以上の多様な質的充実が見られた一年でしたが、現象面では「『ドライブ・マイカー』と、それ以外」という整理に尽きる2021年だったのではないでしょうか。これほど国際競争力という主題が日本映画界にせり上がってきたのは本当に久々かもしれない(切実さの意味では初めての位相かも)。その一方、では国内評価は何を目指すべきかについても考えさせられました。自分の批評軸も幾らか変容したように思います。